五重塔の心柱を吊り下げる構法は地震時の振動を吸収するための対策といわれていますが、どうやら当初の意図はそうでないらしい。
塔は各重ごとに組物など小さい部材を横に数多く積み重ねているため経年による収縮や圧縮の変形によって塔身は総体に下がってくるのに対し縦材の心柱は短くなることがないので相輪を突き上げた状態となる。それにより最上重の屋根と相輪下部の露盤との間には塔身が下がった分のすき間が生じ、雨仕舞いが悪くなるという。
このような建立後のすき間などを未然に防ぐ方法として心柱を吊り下げることを考え出したものである。