最初に造られた観音菩薩像は一面二臂像,つまり我々人間と同じように顔が一つ,手が二本の像だった。
しかし,時代とともに観音信仰が盛んになると,人々は一面二臂の観音像に満足しなくなる。顔一つ,手二本では,大勢の人々の願いを聞き届けることができないだろう。
そこで,生まれてきたのが十一面観音と考えられる。その名が示すように文字どおり十一の顔を持って一時に四方八方に目を向けているので人々は安心した。
しかし,人々はもっと強力な観音菩薩を求めるようになり,登場したのが千手観音だった。十一の顔と千個の目であらゆるところを観察し,あらゆる手段で人々を救おうという力強い観音である。
東長寺の千手観音