「白玉の 歯にしみとほる 秋の夜の 酒はしづかに 飲むべかりけり」(若山牧水)
左党(お酒好き) には心躍る季節がやってきました。
そこで今回は、博多区に唯一残る造り酒屋である石蔵酒造さんについて紹介します。
石蔵酒造の出身は、播州石蔵村だと言われています。黒田家に仕えて御用商人として活躍し、黒田家が播州から豊前中津、さらに筑前に転封となる時に、帯同して博多に来られたそうです。
最初は廻船問屋を営み壱岐・対馬との交易をしていました。主な交易品は鯨油であったそうです。さて鯨油は何に利用されたのでしょう?答えは、石蔵酒造の専務さんによれば鯨油は田の害虫駆除(ウンカ)に使われたものだということです。
酒造業へは江戸時代の終わりに参入されたそうです。現在の石蔵酒造は分家で、「初吉野」という銘柄で販売されていました。子どもの頃、博多のおいさんたちが飲んでいた記憶があります。
隣の某高校の出身者が言うには、「南寄りの風が吹いた日は石蔵酒造から酒の香りが漂ってきてたまらんやった」そうです。
平成23年の火災からも短期間で復興され、国の有形登録文化財の「博多百年蔵」として結婚披露宴や宴会場として、また音響効果の良さのためジャズコンサートにも利用されています。街中に残る歴史的建物であり、博多の酒飲みに愛される造り酒屋として末永く受け継がれていくことでしょう。