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パブリックアートから観る博多の歴史

2023年06月15日(木)
コラムニスト

【那の津往還】 (博多港引揚記念碑)
マリンメッセ福岡の隣の博多港沿いに、黒い台座の上に乗った朱色の大きな像をご覧になった方は多いと思います。

1945年8月 第二次世界大戦終戦時、多くの邦人が海外(特にアジア)に残されていました。その数は旧軍人・一般邦人等を含めると660万人にのぼったそうです。アジアに近い博多港は、終戦直後に引揚援護港の指定を受け、約1年5か月にわたり中国東北部や朝鮮半島などから、旧軍人や一般邦人など139万人の人々が博多港に引き揚げて来ました。また、当時在日の朝鮮や中国人の約50万人が博多港から故郷に帰りました。
「那の津往還」は、博多港が引揚港として果たした役割を忘れることなく、戦争の悲惨な体験を二度と繰り返さないよう 次の世代の人々に語り継ぐため、永久の平和を願って1996年に建てられました。 製作者は、国際的に活躍した久留米出身の彫刻家「豊福 知徳」さんです。台座は船のようで、舳先は中国がある北西方向を向いています。末広がりの扇は人間をイメージした像で複数の穴が空いています。豊福さんの碑文には「敗戦直後の失意とその後に湧き興ってきた生への希望を永遠に記念する・・・」と記されています。

 

【 那の津幻想 】 (パブリックアート)

博多区下川端の博多リバレイン前には、豊福さんが制作した「那の津幻想」が設置されています。「那の津往還」と同じように、船上に立つ人間像の胸部には複数の楕円の空洞があります。小舟で漂流している人間の姿は何となく寂しそうです。
豊福さんは、陸軍特別操縦見習士官として特攻出撃前に終戦を迎えられたそうで、ご自身の戦争体験と戦後の苦悩を重ねた作品のように感じました。

 

【 資料展「引揚港・博多」 】

福岡市市民福祉プラザ「ふくふくプラザ」では、資料展「引揚港・博多」が開設されています。博多港が日本最大級の引揚港として果たした歴史的役割や、引き揚げてきた方々の苦悩の道のり、平和への願いを次の世代の人々に語り継いで行くために開設された常設の資料展です。

 

【 パブリックアートで思いを馳せる 】
博多の街をそぞろ歩きで見つけた、豊福さんの「那の津往還」と「那の津幻想」。 その後の資料展「引揚港・博多」で、歴史的背景や苦難を知り、平和への願いを新たにした一日でした。

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